怖い話「エンドレス」

その日は、朝から雨が降っていました。

 

私は仕事を終え、傘を持っていなかったので駅から自宅まで雨を避けるようにして早足で歩いていました。

 

近所の公園の前を通りかかったとき、二人の幼い少女がブランコに腰かけ私をじっと見ていることに気づきました。

 

時刻は夜の11時を回ったところでしょうか。当然、あたりは真っ暗で、親らしき人影もなく、子どもたちだけで遊んでいること自体、不可解でした。

 

しかし、そのまま放っておくことも出来ず、 私は「どうしたの?お父さんかお母さんは?」と声をかけました。

 

すると、お姉ちゃんらしき背の高い方の女の子が、ニコッと笑い「おじちゃん、遊ぼう」と答えました。妹の方は、黙ったまま、目はどこか宙をさまよっています。

 

「遊ぶって...何して?」

 

「ピザって10回言ってみて!」

 

そのゲームなら、覚えがありました。断るわけにもいかず、私は、少しだけ彼女たちの相手をすることにしました。

 

「ピザピザピザピザピザ...

 

...ピザ」

 

ちょうどそのときでした。私が10回目のピザを言い終えるやいなや、先ほどまで暗い表情でひとことも言葉を発しなかった妹の方が「CLEAR」と、とても綺麗な発音で喋ったのです。

 

「え?」と戸惑う私に、妹は続けて「NEXT LEVEL」と、それもまた綺麗な発音で言いました。

 

今度は姉の方が「じゃあ、次は11回に挑戦だよ!」と私を促します。

 

「ピザピザピザピザピザピザ...

 

...ピザ」

 

11回目のピザを言い終えるやいなや、またしても妹の「CLEAR」「NEXT LEVEL」

 

「おじちゃん、次は12回に挑戦だよ!」

 

それは、私の知っているゲームとは違いました。

 

それは、いつまでも、いつまでも、続きました。